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就労継続支援A型の始め方|B型との違い・雇用契約・指定要件・人員基準を解説

  • 執筆者の写真: 和久 竹村
    和久 竹村
  • 5 日前
  • 読了時間: 8分

就労継続支援A型(エーがた)は、雇用契約を結んで働きながら支援を受ける、障害福祉サービスの中でも「働く」要素が最も強い事業です。これから開設を検討される方に向けて、B型との違い、A型ならではの雇用契約・最低賃金、そして法人格・定員・人員基準といった指定要件を、行政書士の視点で整理しました。


結論:A型は「雇用契約と最低賃金」が最大の特徴


就労継続支援A型は、利用者と雇用契約(労働契約)を結び、最低賃金以上の賃金を支払うことが必須の事業です。ここが、雇用契約を結ばないB型との決定的な違いです。開設には、株式会社やNPO法人などの法人格、原則10名以上の定員、職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者などの人員配置、3.3平方メートル/人以上の作業室といった指定要件をすべて満たす必要があります。基本報酬は令和6年度改定で「スコア方式」が見直され、労働時間や生産活動の収支などを点数化して評価する仕組みになりました。なお具体的な単位数・点数配分・運用は最新の告示と自治体の手引きで必ず確認してください。


就労継続支援A型とは


就労継続支援A型は、障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づく訓練等給付の一つです。一般企業などへの就職が現時点で難しい障害のある方に、雇用契約に基づく就労の機会と、就労に必要な知識・能力の向上のための支援を提供します。


最大のポイントは「雇用契約を結んで働く」こと。利用者は事業所の従業員として労働基準法や最低賃金法の適用を受け、事業所には最低賃金以上の賃金を支払う義務があります(出典:障害者総合支援法、最低賃金法)。


利用対象となる方


利用対象は、原則として18歳以上65歳未満で、就労に必要な知識・能力の向上が見込まれる障害のある方です(一定の条件を満たせば65歳以上も利用可能な場合があります)。対象者の細かな要件は指定権者(指定を出す都道府県・指定都市・中核市など。指定権者=事業所の指定を行う行政機関)によって運用が異なることがあるため、お住まいの自治体の手引きでご確認ください。


A型とB型の違い


同じ就労継続支援でも、A型とB型は「雇用契約の有無」を起点に大きく性格が異なります。


雇用契約の有無


A型は雇用契約あり、B型は雇用契約なしが基本です。A型の利用者は「労働者」として働き、B型の利用者は雇用契約を結ばずに生産活動に参加し、成果に応じた「工賃」を受け取ります。


賃金(最低賃金)か工賃か


A型では最低賃金以上の「賃金」が保障されます。地域別最低賃金が適用されるため、所在地によって支払うべき下限額が変わります。一方、B型は最低賃金の適用がなく、支払われるのは「工賃」です。この違いから、A型は生産活動による収益で人件費を賄える事業計画が、開設審査でも運営上でも強く求められます。


対象者像と支援の力点


A型は「雇用契約のもとで継続して働ける方」が中心で、勤務日時が定まった安定就労が前提です。B型は体調や障害特性に合わせて柔軟に働きたい方が中心になります。A型を選ぶ際は、雇用主としての労務管理(労働時間管理、社会保険、安全衛生など)を担う覚悟が必要です。


就労継続支援A型の指定要件


A型を始めるには、指定権者から事業所の「指定」を受ける必要があります。指定要件は大きく(1)法人格、(2)人員基準、(3)設備基準、(4)運営基準に分けられます。


法人格


A型は個人事業では開設できません。株式会社・合同会社・一般社団法人・NPO法人・社会福祉法人・医療法人などの法人格が必要です。さらに、定款の事業目的に障害福祉サービスを行う旨の記載があることが求められます。


定員


利用定員は原則10名以上が必要です(多機能型として他サービスと組み合わせる場合は取扱いが異なります)。基本報酬は定員規模によって単価が変わるため、事業計画段階で定員設計は重要な検討事項になります。


設備基準


訓練・作業室は利用者1人あたり3.3平方メートル以上を確保するのが目安とされ、そのほか相談室、洗面所・トイレ、必要な備品などが求められます。バリアフリーへの配慮、消防法・建築基準法上の手続き(用途変更や消防同意・検査など)が必要になる場合があり、ここは物件選定の段階で見落としやすいポイントです。具体的な面積要件や付帯設備は指定権者により細部が異なるため、契約前に自治体の手引きで確認してください。


人員基準(配置すべき職員)


A型では、利用者の支援と事業運営のために複数の職種を配置します。


サービス管理責任者(サビ管)


サービス管理責任者(サビかん。個別支援計画の作成や支援の質を管理する責任者)は配置が必須で、要件を満たす実務経験と所定研修の修了が求められます。利用者数に応じて必要数が増える設計で、一定数までは1名、それを超えると追加配置が必要になります。少なくとも1名は常勤であることが原則です。


職業指導員・生活支援員


職業指導員(仕事の技術指導を行う職員)と生活支援員(日常生活面の支援を行う職員)は、常勤換算で「利用者数÷7.5」または「利用者数÷10」以上を配置します。この比率の違いが、後述する基本報酬の区分(7.5:1か10:1か)に対応します。職業指導員・生活支援員のうち、いずれか1名以上は常勤である必要があります。


管理者


管理者の配置も必要です。原則として専従ですが、業務に支障がない範囲で他の職務との兼務が認められる場合があります。


※各職種の必要数・常勤要件・サビ管の研修要件などの細部は、最新の告示・基準省令と、お住まいの自治体の手引きで必ず確認してください。


基本報酬とスコア方式(令和6年度改定)


A型の基本報酬は、令和6年度(2024年度)障害福祉サービス等報酬改定で「スコア方式」が見直されました(出典:厚生労働省 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定)。


スコア方式とは


スコア方式は、事業所の取組を複数の評価項目で点数化し、その合計点(スコア)に応じて基本報酬の単価が決まる仕組みです。主な評価の観点には、労働時間、生産活動、多様な働き方、支援力向上のための取組、地域連携活動などがあり、令和6年度改定では利用者の知識・能力向上に向けた支援の評価が加わるなどの見直しが行われました。


特徴的なのは生産活動の評価で、生産活動収支が賃金総額を上回れば加点、下回れば減点という考え方が取り入れられ、「最低賃金を生産活動の収益で賄えているか」が重視されます。労働時間についても、平均労働時間が長い事業所の点数が高く設定される方向で見直されました。


職員配置による区分


基本報酬は、職員配置が7.5:1以上(サービス費Ⅰ)か10:1以上(サービス費Ⅱ)かという区分と、定員規模、スコアの組み合わせで決まります。手厚い配置ほど単価が高くなる設計です。


※スコアの具体的な点数配分、各項目の基準、基本報酬の単位数は改定のたびに変わり得ます。本記事では数値の断定を避けています。最新の告示・留意事項通知と自治体の手引きで必ずご確認ください。


令和8年度(2026年)の期中改定にも注意


報酬は数年ごとの本改定に加え、期中の臨時的な見直しが行われることがあります。令和8年度(2026年)には臨時応急的な見直しが予定され、A型に関係するものとして「就労移行支援体制加算」の適正化などが挙げられています(出典:厚生労働省 報酬改定検討チーム資料)。加算の取得を事業計画に織り込む際は、最新の見直し内容を踏まえる必要があります。具体的な適用時期・要件は公表される告示でご確認ください。


開設までの大まかな流れ


A型開設は、おおむね次の順序で進みます。(1)法人設立または定款変更、(2)事業計画・収支計画の作成、(3)物件選定と消防・建築の確認、(4)人員(特にサビ管)の確保、(5)指定権者との事前協議、(6)指定申請、(7)指定後の運営開始。とくにA型は雇用契約と最低賃金が前提となるため、収支計画の実現可能性が審査でも重視されます。事前協議のタイミングや必要書類は自治体ごとに差があるため、早めに窓口へ確認することをおすすめします。


よくある質問(FAQ)


Q1. A型とB型はどちらが始めやすいですか


「始めやすさ」は事業者の体制によります。A型は雇用契約と最低賃金の支払義務があり、生産活動の収益で人件費を賄える事業計画が求められる分、ハードルは高めです。一方で利用者が労働者として安定就労できる点が強みです。雇用主としての労務管理を担えるかが判断の分かれ目になります。


Q2. 個人事業でもA型を開設できますか


できません。A型の開設には株式会社・NPO法人などの法人格が必要で、定款に障害福祉サービスを行う旨の記載が必要です。


Q3. 利用者には必ず最低賃金を払う必要がありますか


はい。A型は雇用契約に基づくため、原則として地域別最低賃金以上の賃金を支払う義務があります(最低賃金法)。所在地の最低賃金額は毎年改定されるため、最新額の確認が必要です。


Q4. 定員は何名から始められますか


原則10名以上です。定員規模は基本報酬の単価にも影響するため、事業計画と合わせて検討してください。多機能型の場合は取扱いが異なります。


Q5. 人員や報酬の数値は記事のままで申請してよいですか


いいえ。人員の必要数や報酬の単位数・スコア配分は告示改定で変わり得ます。本記事は概要の整理であり、申請時は最新の告示・基準省令と、お住まいの自治体の指定申請の手引きで必ず確認してください。指定権者により運用が異なる点にもご注意ください。


まとめ


就労継続支援A型は、「雇用契約」「最低賃金」「生産活動の収益性」という、働くことに正面から向き合う事業です。法人格・定員・人員・設備の指定要件を満たし、スコア方式を踏まえた事業計画を組み立てることが、安定運営の第一歩になります。要件や報酬は改定が続く分野ですので、最新情報の確認と、早めの事前協議を心がけてください。


(本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の指定可否や医療・労務に関する判断を保証するものではありません。具体的な手続きは指定権者および専門家にご相談ください。)

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