就労継続支援B型の始め方|指定要件・人員基準・報酬【2026年版】
- 和久 竹村
- 5 日前
- 読了時間: 7分
結論
就労継続支援B型(雇用契約を結ばずに就労機会と工賃を提供する障害福祉サービス)を始めるには、まず法人格を備え、人員基準・設備基準・運営基準を満たして指定権者(都道府県・政令市等)の指定を受ける必要があります。基本報酬は令和6年度改定で平均工賃月額や人員配置に応じた区分に再編され、さらに令和8年(2026)6月の期中改定では新規指定事業所の報酬調整なども示されています。単位数や細かな要件は最新の告示・お住まいの自治体の手引きで必ずご確認ください。
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型は、一般企業での就労が難しい障害のある方に、就労や生産活動の機会を提供し、知識・能力の向上を図る障害福祉サービスです。利用者と雇用契約を結ばない点が特徴で、働きに応じて工賃(賃金ではなく作業の対価)を支払います。雇用契約を結び最低賃金の支払義務がある就労継続支援A型とは、ここが大きく異なります。
開業の前提として、まず障害福祉サービス事業を行う法人であること、そして行政から「指定」を受けることが必要です。指定の全体像は、別記事の「障害福祉サービスの指定申請とは?」もあわせてご覧ください。
【POINT】
B型は「雇用契約なし・工賃を支払う」形態です。最低賃金の支払義務はありませんが、平均工賃月額が基本報酬に影響するため、工賃向上の取り組みが事業運営の要になります。
指定を受けるための3つの基準
指定を受けるには、大きく分けて人員・設備・運営の3つの基準を満たす必要があります。様式や細部の運用は指定権者(自治体)により異なりますので、必ずお住まいの地域の「指定申請の手引き」をご確認ください。
① 人員基準
主に次の職種の配置が求められます。常勤・兼務の可否や常勤換算の数え方は細かく定められているため、配置計画は早めに固めておくと安心です。
管理者:原則1名(一定の条件で他職種との兼務が可能な場合あり)
サービス管理責任者(サビ管):実務経験と研修修了の要件を満たす者を配置
職業指導員・生活支援員:合計で利用者数に応じた人数を配置(いずれか1人以上は常勤)
職業指導員・生活支援員の配置は、報酬上は6:1・7.5:1・10:1といった人員配置の手厚さで基本報酬の区分が変わります(詳細は後述)。人員基準として求められる最低限の配置と、加算的に評価される手厚い配置は分けて考えると整理しやすくなります。
② 設備基準
訓練・作業に必要な作業室・訓練室、相談室(プライバシーに配慮した区切り)、洗面所・トイレ、必要な備品などを整える必要があります。バリアフリーや面積、消防法令適合(消防法令適合通知書)、建築基準法上の用途などは物件によって論点が分かれるため、物件契約の前に確認することをおすすめします。
③ 運営基準・定員
運営規程や重要事項説明書の整備、個別支援計画の作成、虐待防止・身体拘束等の適正化、業務継続計画(BCP)などの体制整備が求められます。定員は単独型で20人以上が原則とされますが、多機能型として他サービスと組み合わせる場合は取扱いが異なります。定員の下限・考え方は自治体の手引きで要確認です。
【注意】
物件・人員・法人定款は、いずれも「後から直す」となると時間とコストがかかります。とくに定款の事業目的に障害福祉サービス事業の記載がないと、登記の変更からやり直しになります。着手前の確認が重要です。
報酬のしくみ(令和6年度改定)
令和6年度(2024)報酬改定で、就労継続支援B型の基本報酬体系が大きく見直されました。従来の「平均工賃月額に応じた区分」に加え、利用者の就労や生産活動への参加等で評価する区分が整理され、さらに人員配置の手厚さでサービス費の区分が分かれる形になっています。
人員配置 サービス費の区分(イメージ)
6:1(手厚い配置) サービス費Ⅰ/Ⅳ
7.5:1 サービス費Ⅱ/Ⅴ
10:1(人員基準上の最低水準) サービス費Ⅲ/Ⅵ
あわせて、令和6年度改定では平均工賃月額の算定方法も見直されました。年間の工賃支払総額を、延べ利用者数や開所日数をもとに割り戻して月額換算する考え方に変わっています。工賃が基本報酬に直結する区分では、この算定の理解が収支計画の前提になります。
【具体例】
同じ利用者数でも、人員配置を手厚くしてサービス費Ⅰ・Ⅳの区分を取るか、平均工賃月額を引き上げて工賃区分の上位を狙うかで、得られる基本報酬は変わってきます。「人員配置の方針」と「工賃向上の方針」を両輪で設計することが、安定運営のポイントです。具体的な単位数は最新の告示でご確認ください。
令和8年6月 期中改定の注意点
令和8年(2026)6月施行の期中改定(臨時的な見直し)では、処遇改善加算の拡充などとあわせて、就労継続支援B型にも複数の見直しが示されています。これから開設を検討する方は、古い情報と混ざらないよう特に注意が必要です。
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新規指定事業所の報酬調整:令和8年6月1日以降に新たに指定を受けるB型事業所は、基本報酬が所定単位数の984/1000(約1.6%相当の調整)となることが示されています。
基本報酬区分の基準額の見直し:工賃に応じた区分の基準額を引き上げる方向の見直しが示されています。
短時間利用減算の取扱い:1日の利用時間が短い方の割合が高い場合の減算について、対象や運用の整理が進められています。利用時間の集計・記録のズレが減算につながり得るため、記録体制の整備が重要です。
就労移行支援体制加算の適正化:一事業所で算定対象となる年間就職者数に上限を設けるなどの適正化が示されています(施行時期は項目により異なります)。
【注意】
ここで挙げた数値・取扱いは見直しの方向性を含み、正式な単位数や施行時期は告示・通知で確定します。実際の収支計画や届出にあたっては、必ず厚生労働省の最新資料とお住まいの自治体の通知でご確認ください。「最新の告示・自治体の手引きで要確認」が大原則です。
開業までの流れ
法人を準備する:株式会社・合同会社・NPO法人等を設立、または既存法人の定款の事業目的に障害福祉サービス事業を追加します。
物件・人員を確保する:設備基準を満たす物件を確保し、サビ管・職業指導員・生活支援員等の採用・配置計画を固めます。消防・建築の確認も並行します。
事前協議を行う:指定権者(自治体)と事前協議を行い、定員・人員・図面・運営方針などを擦り合わせます。スケジュールは自治体の受付月に左右されます。
指定申請書を提出する:運営規程・人員配置・設備・各種体制に関する書類を揃えて申請します。加算を取る場合は体制等の届出も準備します。
指定・開所:審査を経て指定を受け、開所します。開所後は記録の整備と請求事務(国保連請求)を継続的に運用します。
※ 本記事の区分・要件・数値は、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定」関連資料(令和6年度改定および令和8年度の臨時的な見直し)と各自治体の指定申請の手引きをもとに整理しています。報酬改定や自治体の運用により取扱いが変わる場合があるため、実際の申請・算定にあたっては最新の告示・お住まいの自治体の手引きで必ずご確認ください。
まとめ
就労継続支援B型は、法人・人員・設備・運営の基準を満たして指定を受けることが出発点です。報酬は令和6年度改定で人員配置と工賃に連動する形に再編され、令和8年6月の期中改定でも新規開設に関わる調整が示されています。物件契約・人員確保・定款を着手前に確認し、不明点は指定権者に確認しながら進めることが、遠回りを避ける近道です。当事務所では、法人設立から指定申請・加算の届出・運営支援までワンストップで対応しています。
よくある質問
[Q] 就労継続支援B型の開業に必要な定員は何人ですか?
[A] 単独型のB型は利用定員20人以上が原則です。多機能型として他のサービスと組み合わせる場合は1サービスあたりの最低人数など別の取扱いがあります。定員の考え方や下限は指定権者(自治体)の手引きで必ずご確認ください。
[Q] 資格がなくても就労継続支援B型を開業できますか?
[A] 開業には法人格が必要で、定款の事業目的に障害福祉サービス事業を記載します。代表者個人の資格は必須ではありませんが、サービス管理責任者(サビ管)には実務経験と研修修了の要件があり、配置が指定の前提になります。
[Q] 令和8年6月以降に新規開設すると報酬は下がりますか?
[A] 令和8年6月1日以降に新たに指定を受けるB型事業所は、基本報酬が所定単位数の984/1000となる調整が示されています。最新の告示と自治体の通知で必ず最新の取扱いをご確認ください。
[Q] 就労継続支援A型とB型はどちらが始めやすいですか?
[A] B型は雇用契約を結ばず工賃を支払う形態のため、最低賃金の支払義務があるA型に比べ、収支設計の自由度が高い傾向があります。ただし平均工賃月額が基本報酬に直結するため、工賃向上の取り組みが重要です。
