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就労移行支援の始め方|指定要件・人員基準と就労選択支援

  • 執筆者の写真: 和久 竹村
    和久 竹村
  • 5 日前
  • 読了時間: 8分

結論


就労移行支援(一般就労を目指す障害のある方に、原則2年を上限として訓練・職場開拓・定着支援を行う障害福祉サービス)を始めるには、(1)法人格の取得、(2)指定基準(人員・設備・運営)を満たす体制づくり、(3)指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)への指定申請、という流れが基本です。人員は管理者・サービス管理責任者(サービス内容を管理する責任者。略称「サビ管」)に加え、職業指導員・生活支援員・就労支援員の配置が求められます。さらに令和7年(2025年)10月に新設された「就労選択支援」や、令和8年(2026年)の報酬改定が運営に影響します。数値・要件は告示や自治体ごとの運用で異なるため、必ず最新の告示とお住まいの自治体の手引きでご確認ください。


就労移行支援とはどんなサービスか


就労移行支援は、障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づく訓練等給付の一つです。一般企業への就労を希望する方に対し、生産活動・職場体験などの機会の提供、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練、求職活動の支援、職場定着のための相談などを行います。


利用期間は原則2年(24か月)が上限とされている点が、期間の定めがない就労継続支援A型・B型と大きく異なります。「就職を目指すための、期限つきの訓練の場」という位置づけです。


就労継続支援(A型・B型)との違い


就労継続支援は、一般就労が現時点で難しい方に「働く場」を提供するサービスで、A型は雇用契約あり、B型は雇用契約なし(工賃)が基本です。これに対し就労移行支援は「働く場」そのものではなく、一般就労へ移行するための訓練に重点があります。同じ就労系でも目的が異なるため、自社がどの利用者層を支援したいかを最初に整理することが重要です。


就労移行支援の始め方|全体の流れ


ステップ1 法人格を取得する


障害福祉サービスの指定を受けるには、法人格(株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人など)が必要です。定款の事業目的に「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業」を行う旨の記載が求められます。既存法人で始める場合も、目的の追加(定款変更)が必要になることがあります。


ステップ2 物件・人員・運営体制を整える


指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)を満たす体制を準備します。設備面では訓練・作業室の確保のほか、建築基準法・消防法上の要件(防火・避難、採光・換気など)への適合が前提となります。物件選定の段階で、用途や面積、消防設備が要件を満たすかを事前に確認しておくと、後戻りを防げます。


ステップ3 指定申請を行う


人員・設備・運営の体制が整ったら、指定権者へ指定申請を行います。指定権者は都道府県・指定都市・中核市などで、自治体ごとに事前相談(事前協議)の要否、提出書類、申請受付のスケジュール、現地確認の方法が異なります。多くの自治体で「指定希望月の前々月までに申請」など締切が設けられているため、開業希望時期から逆算した準備が欠かせません。お住まいの自治体が公表する「指定申請の手引き」を一次情報として必ず確認してください。


人員基準のポイント


就労移行支援の主な配置職種は次のとおりです(常勤換算の考え方を含め、詳細は告示・自治体手引きで要確認)。


  • 管理者:専従が原則ですが、管理上支障がない場合はサビ管等との兼務が認められることがあります。

  • サービス管理責任者(サビ管):個別支援計画の作成などを担う責任者。配置には実務経験と所定の研修修了が要件です。

  • 職業指導員・生活支援員:いずれか1人以上は常勤とし、職業指導員と生活支援員の総数が、前年度の平均利用者数を「6」で除した数以上(いわゆる6対1)とされています。

  • 就労支援員:前年度の平均利用者数を「15」で除した数以上(いわゆる15対1)を、常勤換算で配置します。


これらは厚生労働省の人員・設備・運営基準(平成18年厚労省令等)に基づく考え方ですが、常勤換算の算定方法(週の勤務時間の取扱いなど)や兼務の可否は自治体運用で差が出ることがあります。配置計画を組む前に、必ず指定権者の基準・手引きで裏取りしてください。


利用定員の見直し(令和6年度改定)


令和6年度(2024年度)報酬改定では、就労移行支援の利用定員の下限が見直され、従来より小規模な定員での開設が可能となる方向で整理されました。具体的な下限人数は告示・自治体手引きで確認が必要ですが、小規模開設のハードルが下がった点は、新規参入を検討する事業者にとって押さえておきたい変更です。


報酬・加算の最新動向(令和6年度〜令和8年度)


就労移行支援の基本報酬は、就職後一定期間の定着実績(就労定着率)に応じて評価される仕組みが基本です。利用者がどれだけ一般就労に移行し、職場に定着したかが報酬に反映されるため、訓練だけでなく定着支援までを見据えた運営設計が求められます。


地域連携会議実施加算(令和6年度改定)


令和6年度改定では、従来の「支援計画会議実施加算」が「地域連携会議実施加算」へ見直されました(名称変更と要件の整理)。会議の前後でサビ管と情報共有することなどを条件に、サビ管以外の職員の出席でも一定の評価対象とする区分が設けられる方向で整理されています。


就労移行支援体制加算の適正化(令和8年・2026年)


就労移行支援体制加算は、就職実績に着目した加算ですが、近年、同一利用者が事業所と一般就労の間を繰り返し行き来する事例など、本来の趣旨から外れた運用が課題として指摘されてきました。これを受け、令和8年(2026年)に加算の適正化が予定されています。一般に、(1)1事業所が年間に算定できる就職者数に上限(定員に応じた数)を設ける、(2)同一利用者について過去一定期間内(おおむね3年以内)に算定実績がある場合は原則として再算定しない、といった方向で見直しが進められています。適用開始時期や細目は告示・自治体通知で異なり得るため、最新の改定内容を必ずご確認ください。


なお令和8年度の障害福祉サービス報酬改定は「期中改定」として実施される項目があり、改定時期が項目によって異なります。適用日を含め、厚生労働省の公表資料で確認することをおすすめします。


就労移行支援と「就労選択支援」の関係


令和7年(2025年)10月1日、新たな障害福祉サービスとして「就労選択支援」が施行されました。これは、障害のある本人が就労先や働き方をより良く選べるよう、就労アセスメント(就労に関する適性・知識・能力の評価と、就労意向の整理)の手法を用いて選択を支援するサービスです。短期間の作業体験などを通じてアセスメントを行い、本人・関係機関を集めた多機関連携会議で意向を確認します。


就労移行支援事業者にとっての意味


就労選択支援の実施主体には要件があり、就労移行支援または就労継続支援の指定事業者であって、過去3年以内にその事業所から3人以上の利用者が新たに一般就労(通常の事業所への雇用)に移行した実績などを有し、指定権者(都道府県知事等)に認められた事業者とされています。一定の就職実績を積んだ就労移行支援事業所は、将来的に就労選択支援を併せて担える可能性があるということです。


また、就労継続支援B型などの新規利用にあたり、就労選択支援によるアセスメントを前提とする取扱いが段階的に導入される方向で整理が進んでいます。段階導入のスケジュールや適用範囲は地域・時期で異なるため、就労系サービス全体の再編動向として注視し、お住まいの自治体の最新情報で確認してください。


始める前に確認したいチェックリスト


・法人格・定款の事業目的は整っているか

・物件は設備基準(訓練室・面積)と建築・消防の要件を満たすか

・サビ管(実務経験・研修)を含む人員を確保・配置できるか

・指定権者の事前相談の要否・申請締切・必要書類を把握したか

・令和6年度/令和8年度改定の報酬・加算要件を反映した収支計画か

・就労選択支援の動向を踏まえた中長期の事業設計になっているか


よくある質問(FAQ)


Q1 就労移行支援は個人でも開業できますか。


いいえ。障害福祉サービスの指定には法人格が必要です。株式会社・合同会社・NPO法人などを設立(または既存法人の目的追加)したうえで申請します。


Q2 開業までどのくらいの期間がかかりますか。


物件確保・人員採用・自治体との事前相談・申請審査などを含め、一般に数か月単位の準備が必要です。指定権者ごとに申請締切や審査スケジュールが異なるため、開業希望月から逆算して計画してください。具体的な期間は自治体の手引きで確認するのが確実です。


Q3 利用定員は何人から始められますか。


令和6年度改定で利用定員の下限が見直され、より小規模での開設が可能となる方向で整理されました。具体的な下限人数は最新の告示・お住まいの自治体の手引きでご確認ください。


Q4 就労選択支援は必ず併せて行う必要がありますか。


開業時点で必須ではありません。就労選択支援は実施主体に就職実績などの要件があり、別途の指定が必要です。ただし就労系サービス全体の制度再編に関わるため、中長期の事業計画では動向を踏まえておくことをおすすめします。


◇Q5 報酬・人員の数値は記事のとおりに進めて大丈夫ですか。


本記事は制度の全体像を分かりやすく整理したものです。単位数・人員配置・加算要件などの具体的な数値や運用は、最新の厚生労働省の告示・留意事項通知、WAM NET、お住まいの自治体が公表する指定申請の手引きで必ず裏取りしてください。指定権者により取扱いが異なる点があります。


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※本記事は令和6年度報酬改定および令和8年(2026年)改定に関する公表情報をもとに、行政書士監修で一般的な制度概要を解説したものです。個別の指定可否・要件適合の判断は、最新の告示・通知および指定権者の確認が必要です。制度は改正されることがあるため、実際の申請・運営にあたっては必ず一次情報をご確認ください。

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