障害福祉の法人設立|定款の事業目的の書き方と注意点
- 和久 竹村
- 2 日前
- 読了時間: 9分
結論:法人格は指定の前提。定款の「事業目的」に正式名称で書けているかが分かれ目です
障害福祉サービス(障害者総合支援法に基づく事業)や障害児通所支援(児童福祉法に基づく事業)の指定を受けるには、まず法人格(法律上、権利義務の主体になれる資格)が必要です。個人事業では指定を受けられません。
そのうえで重要なのが、定款(ていかん/法人の基本ルールを定めた書類)の「事業目的」欄に、これから行う障害福祉事業がきちんと記載されていることです。記載がなければ、せっかく法人を作っても指定申請に進めず、定款変更からやり直しになります。
法人の種類(株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人など)は問われませんが、種類ごとに事業目的の書き方や手続きの所要日数が異なります。なお、事業目的の具体的な文言は指定権者(都道府県・市など指定を行う自治体)によって求め方が異なるため、必ず申請先の窓口・手引きで事前確認することが大切です。
そもそも「法人格」がなぜ必要なのか
個人事業では指定を受けられません
障害福祉サービス事業者・障害児通所支援事業者として指定を受けるための要件として、申請者が「法人であること」が定められています。これは障害者総合支援法・児童福祉法に基づく指定基準の前提であり、株式会社でも合同会社でも、NPO法人(特定非営利活動法人)でも一般社団法人でも、法人であれば原則として申請できます(社会福祉法人でなくても構いません)。
そのため開業準備は、(1)法人を設立する→(2)定款の事業目的に障害福祉事業を記載しておく→(3)指定申請を行う、という順序が基本になります。
法人の種類による主な違い
法人格があれば指定申請は可能ですが、設立にかかる費用・期間・運営ルールは種類により異なります。
・株式会社:設立の自由度が高く、登記により比較的早く設立できます。
・合同会社(LLC):株式会社より設立費用を抑えやすい形態です。
・NPO法人(特定非営利活動法人):設立・定款変更に所轄庁の「認証」が必要で、時間がかかります(後述)。
・一般社団法人:非営利型の選択など制度設計に幅があります。
どの形態が向くかは、出資・資金調達・社会的信用・税務などの観点から変わります。判断に迷う場合は、行政書士・税理士など専門家への相談をおすすめします(本記事は一般的な情報提供であり、個別の効果や採算を保証するものではありません)。
定款の「事業目的」の正式な書き方(法人種別ごと)
ここが本記事の核心です。複数の自治体(和歌山市・八王子市・茨城県・名古屋市などの公開資料)が、定款の事業目的の表記方法を案内しています。共通する考え方は「正式名称(略称ではなく)で、根拠法に基づく事業として書く」ことです。
障害福祉サービス事業(障害者総合支援法に基づく事業)の場合
社会福祉法人以外の法人(株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人など)の場合、一般的に次のように記載することが案内されています。
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」
この「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」が、いわゆる「障害者総合支援法」の正式名称です。定款には略称ではなく正式名称で記載するのが原則とされています。
この書き方をしておくと、生活介護・就労継続支援・共同生活援助(グループホーム)などの障害福祉サービスを幅広く包含できるとされています。ただし、地域生活支援事業や特定相談支援事業(計画相談など)は別枠で記載が必要になる場合があるため、行う事業に応じて追記を検討します。
障害児通所支援事業(児童福祉法に基づく事業)の場合
放課後等デイサービスや児童発達支援などを行う場合は、児童福祉法を根拠法として、一般的に次のように記載することが案内されています。
「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」
「障害児通所支援」には、児童福祉法第6条の2の2に規定される児童発達支援・放課後等デイサービス・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援などが含まれるとされています。そのため、個別事業を一つずつ並べなくても、この表記で広く対応できると案内する自治体が多く見られます。
なお、障害福祉サービス(成人向け)と障害児通所支援(児童向け)を両方行う場合は、それぞれの根拠法に基づく目的を両方記載しておく必要があります。
社会福祉法人の場合は書き方が変わります
社会福祉法人の場合は、上記とは別に「障害福祉サービス事業の経営」「障害児通所支援事業の経営」といった表記が案内されています。社会福祉法人・医療法人など所轄庁の認可を要する法人は、一般の法人とは別の指導があるため、所轄庁の案内に従う必要があります(本記事は主に株式会社・合同会社・NPO・一般社団法人を想定しています)。
就労継続支援A型は要注意(事業目的に書けるものが限られます)
就労継続支援A型を行う場合は、特別な注意が必要です。複数の自治体資料が、A型事業者は「専ら社会福祉事業を行う者でなければならない」とされている点を案内しています。
これはつまり、定款の事業目的に、社会福祉事業に該当しない事業(例:物販・飲食など、福祉と直接関係しない営利目的の事業)を併記していると、A型としての指定が認められないことがあるという意味です。A型を予定している場合は、事業目的の構成を申請先と事前にすり合わせることが特に重要です(個別の判断は指定権者により異なるため、必ず窓口確認を)。
法人の種類で手続き期間が大きく変わる(特にNPO法人)
株式会社・合同会社:登記中心で比較的短期
株式会社・合同会社は、定款作成・(株式会社は)認証・登記という流れで、比較的短期間で設立・変更が可能とされています。
NPO法人:定款変更に「認証」が必要で時間がかかります
NPO法人(特定非営利活動法人)は、事業目的を変更する場合などに所轄庁(都道府県・指定都市など)の「認証」が必要です。複数の自治体資料によれば、認証が必要な定款変更では、設立認証と同様に縦覧(一定期間の公開)の手続きを経るため、申請から認証まで数か月(おおむね2〜4か月程度を目安に案内する自治体が多い)かかるとされています。
このため、すでにNPO法人を持っているが定款に障害福祉事業の記載がないという場合は、定款変更の所要期間を見込んだうえで、開業スケジュールを逆算することが欠かせません。具体的な所要日数は所轄庁により異なるため要確認です。
よくある失敗と実務上のポイント
既存法人でも「定款に記載がなければ」変更が必要
すでに法人格があっても、定款の事業目的に障害福祉事業の記載がない場合は、指定申請の前に定款変更が必要です。「法人はあるからすぐ申請できる」と思い込み、後から変更手続きが発覚してスケジュールが大幅に遅れるケースは少なくありません。
略称・自己流の表記は避ける
「障害者総合支援法に基づく事業」のような略称や、自治体の案内と異なる独自表現は、指定権者から補正を求められることがあります。原則は正式名称・案内に沿った表記です。
文言は「指定権者により異なる」前提で確認を
繰り返しになりますが、定款の事業目的に求める文言は指定権者(自治体)によって異なります。本記事で紹介した文言は多くの自治体で案内されている一般的な例ですが、最終的には申請先の手引き・窓口で必ず確認してください。これが、やり直しを防ぐ最大のポイントです。
まとめ
障害福祉事業の指定には法人格が前提(個人事業では不可)。
定款の事業目的に、障害福祉サービスは「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」、障害児通所支援は「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」と正式名称で記載するのが一般的。
就労継続支援A型は「専ら社会福祉事業を行う者」要件があり、目的の併記に注意。
NPO法人は定款変更の認証に数か月かかるため、スケジュールに余裕を。
文言は指定権者により異なるため、必ず事前に窓口・手引きで確認を。
定款の事業目的は、一文字の表現で申請が止まることもある繊細な部分です。法人設立から指定申請までを見据えた定款設計について、結和法務事務所(行政書士)が障害福祉に特化してサポートしています。お気軽にご相談ください。
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よくあるご質問(FAQ)
Q1. 個人事業主のままでは障害福祉の指定は受けられませんか?
A. 受けられません。障害者総合支援法・児童福祉法に基づく指定の前提として法人格が必要です。株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人など、まず法人を設立する必要があります。
Q2. 株式会社と合同会社、NPO法人のどれが有利ですか?
A. 法人格があればいずれも指定申請は可能で、「これが絶対に有利」と一律には言えません。設立費用・期間・資金調達・社会的信用・税務などの観点で変わります。NPO法人は定款変更に認証期間がかかる点に注意が必要です。判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
Q3. 定款の事業目的は具体的に何と書けばよいですか?
A. 一般的な案内では、障害福祉サービスは「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」、放課後等デイサービス等は「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」と記載します。ただし求められる文言は指定権者(自治体)により異なるため、必ず申請先で確認してください。
Q4. すでに会社がありますが、定款を変えないとダメですか?
A. 定款の事業目的に障害福祉事業の記載がなければ、指定申請の前に定款変更が必要です。記載があるかどうかを早めに確認しておくことをおすすめします。
Q5. 就労継続支援A型を予定していますが、定款で気をつけることは?
A. A型事業者は「専ら社会福祉事業を行う者」とされ、社会福祉事業に該当しない営利事業を目的に併記していると指定が認められないことがあります。事業目的の構成を申請先と事前にすり合わせてください(判断は指定権者により異なります)。
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【参考・出典(本文中で参照した一次情報・自治体資料)】
・八王子市「障害福祉サービス事業等の定款表記について」https://www.city.hachioji.tokyo.jp/jigyosha/012/002/sinkisiteisinsei/p003155_d/fil/teikanhyouki.pdf
・茨城県「実施事業の定款への記載方法について」https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/shofuku/jiritsu/shofuku/e/documents/005.pdf
・奈良市「定款記載事項及び登記する事業の目的について」https://www.city.nara.lg.jp/uploaded/attachment/127787.pdf
・名古屋市「障害福祉サービス事業者等 指定申請・指定基準の手引き」https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/_files/00122450/shitei-tebiki20250701.pdf
・内閣府NPOホームページ「定款」https://www.npo-homepage.go.jp/qa/ninshouseido/ninshou-teikan
※本記事は2026年6月27日時点の公開情報に基づく一般的な情報提供です。制度・取扱いは改正や指定権者の運用により変わることがあります。実際の申請にあたっては、必ず申請先(指定権者)の最新の手引き・窓口でご確認ください。
