障害福祉サービスの管理者の要件|兼務の可否と常勤・専従の考え方を解説
結論|管理者は「原則、常勤で専ら管理業務」。兼務は支障のない範囲で、取扱いは自治体で差がある
障害福祉サービス事業所の管理者(事業所全体の運営と職員を取りまとめる責任者)は、原則として「常勤」で、「専ら(もっぱら)管理の職務に従事する人」を置くことが求められます。ただし、管理業務に支障がない場合には、同じ事業所内の他の職務や、同一敷地内にある他の事業所の職務との兼務が認められています。
ここで注意したいのは、兼務が「できる・できない」は、サービス種別や兼ねる職種、そして指定権者(都道府県・市など指定を行う行政庁)の運用によって判断が分かれるという点です。特にサービス管理責任者(サビ管)との兼務は、事業所ごとの体制次第で扱いが変わりやすい論点です。
本記事では、管理者の役割、常勤・専従の意味、兼務の考え方を整理します。具体的な基準の条文や数値は、サービス種別ごとの最新の指定基準・解釈通知と、自社の指定権者が公表する手引きで必ず確認してください(出典:厚生労働省「障害福祉サービス等」関連ページ)。

管理者の役割とは
事業所の運営と職員をまとめる責任者
管理者は、事業所の従業者(職員)と業務を一元的に管理し、指定基準を守って運営する責任を負う立場です。具体的には、次のような役割が想定されます。
職員の勤務管理、配置の調整、教育・研修の実施
利用者の受け入れや契約、サービス提供状況の把握
苦情対応、事故・ヒヤリハットへの対応、虐待防止や身体拘束の適正化に関する体制づくり
請求・記録・書類管理など、法令順守(コンプライアンス)の確認
指定権者への各種届出や、実地指導(行政による現地確認)への対応
管理者は、サービスを直接提供する職員とは役割が異なります。現場を見ながら、事業所全体が基準どおりに動いているかを確認する立場だと考えると分かりやすいでしょう。
資格要件は原則「なし」だが、サービスにより追加要件がある
管理者そのものについては、多くのサービスで特定の国家資格は求められていません。一方で、サービス種別や指定権者によっては、経験や研修の修了などの追加の条件を設けている場合があります。資格がいらないからといって、誰でもよいわけではありません。
また、管理者や法人の役員などが、指定の「欠格事由」(指定を受けられない一定の事情)に該当しないことも前提です。申請時に管理者の経歴書や誓約書の提出を求める指定権者もあります。必要書類は自治体の様式集で確認してください。
「常勤」と「専従」の意味を整理する
常勤とは
常勤とは、その事業所の定める通常の勤務時間(就業規則などで決めた、常勤の従業者が勤務すべき時間)に達して勤務していることをいいます。短時間のパートで働く人は、基本的に常勤にはあたりません。
実務上は、次のように考えると整理しやすくなります。
雇用形態の名称(正社員・パート)ではなく、「事業所が定める常勤の勤務時間に達しているか」で判断する
同じ事業所の中で複数の職種を兼ねる場合、合計した勤務時間が常勤の勤務時間に達していれば、常勤として扱われる考え方がある
育児・介護に関する短時間勤務制度を利用する場合の取扱いは、解釈通知や自治体の運用で確認する
勤務時間の具体的な基準値は、最新の解釈通知や自治体の手引きで要確認です。
常勤換算との違い
「常勤換算」は、非常勤職員を含めた勤務時間を、常勤の人数に置き換えて数える方法で、人員配置基準(必要な職員数の確認)に使われます。「常勤」であることを求める条件と、「常勤換算で必要数を満たす」ことは別の話です。混同すると、体制の組み方を誤る原因になります。
項目 | 常勤 | 常勤換算 |
意味 | 事業所が定める常勤の勤務時間に達して勤務していること | 非常勤職員を含めた勤務時間を、常勤の人数に置き換えて数える方法 |
位置づけ | 満たすことを求められる条件 | 人員配置基準(必要な職員数の確認)に使われる |
専従(専ら従事)とは
専従(基準上の表現は「専ら従事する」)とは、その職務の時間帯に、他の職務を兼ねずに従事することをいいます。必ずしも「一日中ずっと」という意味ではなく、通常は、勤務時間のうちその職務に就いている間は他の職務に就かない、という考え方で整理されます。
管理者の場合は、管理業務に専ら従事するのが原則です。ただし、管理業務に支障がない範囲で他の職務を兼ねることが認められています。
管理者は原則として常勤で、専ら管理業務に従事します。他の職務との兼務は、管理業務に支障がない範囲が前提です。
管理者の兼務はどこまで認められるか
兼務が認められる基本の考え方
管理者の兼務は、一般に次の二つの場面で整理されます。

同じ事業所内の他の職務との兼務(例:管理者が生活支援員などを兼ねる)
同一敷地内にある他の事業所・施設等の職務との兼務
いずれも、「管理者としての業務に支障がないこと」が前提です。事業所の規模、利用者数、職員体制、移動にかかる時間などを踏まえて、実際に管理業務を行えるかが見られます。
従業者(生活支援員・職業指導員など)との兼務
管理者が現場の従業者を兼ねる体制は、小規模事業所では珍しくありません。ただし、次の点に注意が必要です。
管理者として働く時間と、従業者として働く時間を区別して勤務表に記載する
人員配置基準の職員数を数える際に、管理業務の時間を算入できるかは、サービス種別や自治体の運用で異なる場合がある
現場業務が多く、管理業務(記録の確認、職員の指導、苦情対応など)が回らなくなると、「支障がある」と判断されるおそれがある
サビ管(サービス管理責任者)との兼務
サビ管(個別支援計画の作成など、サービスの質を管理する責任者)は、サービスによっては「専任かつ常勤」で配置することが求められます。そのため、管理者がサビ管を兼ねる場合は、次のような点が論点になります。
管理者の兼務の範囲として、サビ管の職務を兼ねることが認められるか
サビ管に求められる専任性を、兼務によって損なわないか
利用者の人数が増えたとき、個別支援計画の作成やモニタリングなどに十分な時間を確保できるか
サビ管の配置が基準に必要な人数に達しているか
管理者とサビ管の兼務は、「管理業務に支障がない範囲」で認められるかどうかを指定権者が個別に判断します。可否の線引きは自治体で異なるため、事前協議で確認してください。兼務の可否や必要な説明資料は、指定権者の手引きや事前相談で確認しましょう。
複数事業所の管理者を兼ねる場合
同一法人が近接して複数の事業所を運営する場合、同じ人が複数の事業所の管理者を兼ねたいという相談がよくあります。この場合は、事業所間の距離、移動時間、緊急時にすぐ駆けつけられるか、といった点から「管理上支障がないか」が判断されます。同一敷地内かどうかで取扱いが変わることも多く、自治体の判断に幅があります。
指定権者ごとの取扱いの違い
管理者の要件は、国の指定基準と解釈通知が土台ですが、実際の審査は指定権者が行います。そのため、次のような点で運用に差が出ることがあります。
兼務を認める範囲(同一敷地内の範囲、兼ねられる職種の組み合わせ)
兼務の場合に提出を求める書類(兼務の理由を説明する書面、勤務時間の内訳など)
管理者に求める経験や研修の有無
常勤の判断に使う勤務時間の確認方法
事前相談の方法や、申請の受付時期
同じ内容の体制でも、ある自治体では認められ、別の自治体では追加説明を求められる、ということが起こり得ます。「他の事業所で通ったから大丈夫」とは言えない点に注意してください。
兼務の可否は指定権者ごとに異なります。他の事業所の実績に頼らず、自社の指定権者の手引きと事前相談で確認しましょう。
指定申請前に確認したい手順
STEP1 サービス種別の基準を確認する
開業を予定するサービス(生活介護、就労継続支援、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスなど)の指定基準と解釈通知で、管理者に関する部分を確認します。
STEP2 自治体の手引き・様式を確認する
指定権者の公開している手引き、申請書類のチェックリスト、勤務形態一覧表の記載例を確認します。兼務の記載方法は自治体ごとに指定があることが多いです。
STEP3 兼務の有無と体制を決める
管理者を専任にするのか、他の職務を兼ねるのかを決めます。サビ管や従業者との兼務を想定する場合は、管理業務の時間をどう確保するかも併せて整理します。
STEP4 勤務形態一覧表を作成する
管理者とサビ管、従業者の勤務時間を、常勤・専従・兼務の区別が分かるように作成します。ここが曖昧だと、審査で追加の確認が入りやすくなります。
STEP5 事前相談で確認する
兼務を伴う場合は、申請前に指定権者へ事前相談を行い、認められる範囲と必要書類を確認します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 管理者に必要な資格はありますか?
多くのサービスでは、管理者に特定の国家資格は求められていません。ただし、サービス種別や指定権者によって経験や研修などの条件が設けられている場合があります。また、欠格事由に該当しないことが前提です。自社のサービスの基準と自治体の手引きで確認してください。
Q2. 管理者とサビ管は兼務できますか?
サービスや体制、指定権者の運用によって判断が分かれます。管理業務やサビ管の業務に支障がない範囲であれば認められる場合がありますが、サビ管の専任性や常勤性が問われるため、事前に指定権者へ確認することをおすすめします。
Q3. 管理者が生活支援員などを兼ねると、人員配置の数に入れられますか?
管理業務の時間と従業者としての勤務時間を分けて考え、従業者として働いた時間のみを常勤換算に算入する取扱いとされることがあります。扱いは指定権者の手引きで確認してください。ただし、サービス種別や自治体で扱いが異なる場合があるため、勤務形態一覧表の記載方法とあわせて確認してください。
Q4. 非常勤の管理者でも指定は受けられますか?
管理者は原則として常勤が求められます。常勤とは、事業所が定める常勤の勤務時間に達していることを指します。例外的な取扱いの有無は、基準と指定権者の運用で異なりますので、事前に確認が必要です。
Q5. 他県で認められた兼務は、別の自治体でも同じように認められますか?
同じとは限りません。国の基準は共通でも、審査の運用は指定権者ごとに異なります。事業所を設ける自治体の手引きと事前相談の結果に従ってください。
まとめ

管理者は、事業所の運営と職員を取りまとめる責任者であり、原則として常勤で、専ら管理業務に従事することが求められます。従業者やサビ管、他の事業所の職務との兼務は、管理業務に支障がない範囲で認められる場合がありますが、その範囲は指定権者ごとに異なります。体制を決める前に、サービス種別の基準、自治体の手引き、事前相談の順で確認することが、指定申請を円滑に進める近道です。
行政書士 結和法務事務所では、管理者・サビ管の配置や兼務の整理、勤務形態一覧表の作成、指定権者への事前相談を踏まえた指定申請のサポートを行っています。体制づくりでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
(本記事は執筆時点の一般的な情報を整理したものです。実際の要件・必要書類は、最新の指定基準・解釈通知および各指定権者の取扱いによります。個別のご判断は指定権者または専門家にご確認ください。)



