top of page

就労定着支援とは|指定要件・対象者・支援内容をやさしく解説

執筆者の写真: 和久 竹村
和久 竹村
7月6日
読了時間: 9分

結論:就労定着支援は「一般就労6か月後」から「最大3年」まで職場定着を支えるサービス


就労定着支援(しゅうろうていちゃくしえん)とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、就労移行支援などを利用して一般就労(通常の事業所への就職)した障害のある方の「職場定着」を支援する仕組みです。対象は、原則として就労に伴い生じる生活面・就業面の課題があり、一般就労を継続している期間が6か月を経過した方です。支援期間は最長で3年間とされ、月1回以上の支援を通じて、企業・関係機関との連絡調整や生活課題の相談に応じます。指定を受けるには就労定着支援員の配置やサービス管理責任者(サビ管)の配置などの人員・設備・運営基準を満たす必要があります。基本報酬は「就労定着率」に応じて評価される仕組みです。なお、報酬の単位数や加算・減算は令和6年度報酬改定に加え令和8年(2026年)6月の期中改定でも見直しが行われており、最新の告示および指定権者(自治体)の手引きで必ずご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の可否や効果を保証するものではありません。


就労定着支援とは何か(制度の位置づけ)


平成30年に創設された比較的新しいサービス


就労定着支援は、平成30年(2018年)4月の制度改正で新たに創設された障害福祉サービスです。それまでは、就労移行支援事業所などが独自に(制度外で)就職後のフォローを行っていましたが、就職後の職場定着を制度として位置づけ、報酬の対象としたのがこのサービスです(厚生労働省 社会保障審議会障害者部会資料等)。


「就職させること」ではなく「働き続けること」を支える


就労移行支援が「一般就労に向けた訓練・就職活動の支援」を担うのに対し、就労定着支援は「就職した後、働き続けられるようにする支援」を担います。就職はゴールではなくスタートであり、生活リズムの乱れ、体調管理、職場の人間関係、金銭管理などの課題によって離職に至るケースを防ぐことを目的としています。


対象者(誰が利用できるか)


原則「一般就労後6か月を経過した方」


就労定着支援の対象は、就労移行支援・就労継続支援・生活介護・自立訓練などの利用を経て通常の事業所に新たに雇用され、就労を継続している期間が6か月に達した障害のある方です。つまり、就職して間もない最初の6か月間は、これまでの支援(就労移行支援事業所等)による定着支援でカバーし、6か月経過後から就労定着支援へと引き継がれるイメージです。


「生活面・就業面の課題」があることが前提


対象となるのは、就労に伴う環境の変化により、生活面または就業面の課題が生じている方です。就職後にまったく課題がない場合は対象になりにくく、通院・服薬、生活習慣、遅刻・欠勤、職場でのコミュニケーションといった、働き続けるうえでの困りごとに対応するサービスと理解するとわかりやすいでしょう。具体的な対象範囲は指定権者(自治体)の判断による部分もあるため、詳細は管轄自治体にご確認ください。


支援期間(いつまで利用できるか)


最長3年間


就労定着支援の支援期間は、利用開始から最長で3年間です。一般的には1年ごとに支給決定期間を更新しながら、最大3年を上限として支援を継続します。3年間の支援を終えた後は、必要に応じて障害者就業・生活支援センター(通称ナカポツ・就ぽつ)などの地域の関係機関へと支援を引き継いでいくことが想定されています。この「引き継ぎ」を適切に行うことは、令和6年度報酬改定でも重視されており、引き継ぎのための措置を講じていない場合の減算が設けられています(厚生労働省の報酬改定資料)。


支援内容(具体的に何をするか)


月1回以上の相談・連絡調整が基本


就労定着支援では、利用者や企業(雇用主)への相談・指導・助言を行います。具体的には、生活上の問題点や職場での課題を把握し、それを解決するために必要な企業・医療機関・関係機関との連絡調整を行います。また、生活リズムや金銭管理、体調管理といった生活面についての相談・助言も行います。支援は、月に1回以上、利用者との対面等による支援を行うことが基本とされています。


「本人」と「職場」の橋渡しをする


就労定着支援の特徴は、本人だけでなく職場(企業)側にも働きかける点にあります。たとえば、業務内容の調整や配慮事項について企業と相談したり、通院への配慮を依頼したりといった、本人と職場の間に立った調整を行います。医療的な判断や治療方針の指示を行うものではなく、あくまで生活・就労の環境を整える支援である点にご注意ください。


指定要件(人員・設備・運営基準)


就労定着支援員の配置


就労定着支援事業を行うには、指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)から指定を受ける必要があります。人員基準として「就労定着支援員」を配置することが求められ、その員数は、常勤換算方法により、利用者の数を40で除した数以上とされています(たとえば利用者40人までなら常勤換算1人以上が目安)。なお令和6年度報酬改定では、一体的に運営する就労移行支援事業所等の直接処遇職員(職業指導員・生活支援員等)が、支障のない範囲で就労定着支援員を兼務できるよう配置要件が緩和されています(厚生労働省の報酬改定資料)。


サービス管理責任者(サビ管)の配置


人員基準として、サービス管理責任者(サビ管)の配置も必要です。サビ管は個別支援計画の作成や支援内容の管理を担う中核的な職種で、他の職種との兼務の可否や配置数の考え方は指定権者の運用にもよります。設備基準(事務室・相談スペース等)や運営基準の詳細も含め、具体的な要件は必ず管轄の指定権者の手引きでご確認ください。


多くは就労移行支援等との一体的運営


実務上は、就労移行支援や就労継続支援を運営している法人が、あわせて就労定着支援の指定を受けて一体的に運営するケースが多く見られます。自法人の卒業生(一般就労した利用者)をそのまま定着支援につなげられるため、支援の連続性の面でもメリットがあります。令和6年度改定では、障害者就業・生活支援センターも実施主体に追加されました。


基本報酬(就労定着率による評価)


「就労定着率」が高いほど高い報酬に


就労定着支援の基本報酬(就労定着支援サービス費)は、事業所の「就労定着率」に応じて段階的に評価される仕組みです。就労定着率とは、おおむね過去3年間に就労定着支援を利用した方のうち、現在も一般就労を継続している方の割合を指します。定着率が高い(=支援を受けた方が働き続けている)事業所ほど高い単位数が算定される、成果を評価する報酬体系になっています。


令和6年度の単位数(月あたり)の目安


令和6年度報酬改定後の就労定着支援サービス費(月単位)は、就労定着率の区分に応じて、たとえば以下のように設定されています(1月あたりの単位数)。


  • 就労定着率9割5分以上:3,512単位

  • 9割以上9割5分未満:3,348単位

  • 8割以上9割未満:2,768単位

  • 7割以上8割未満:2,234単位

  • 5割以上7割未満:1,690単位

  • 3割以上5割未満:1,433単位

  • 3割未満:1,074単位


これらは代表的な区分の数値であり、利用者数(定員規模)による違いや算定要件の細部があります。1単位あたりの単価は地域区分によっても異なります。正確な単位数は最新の告示および指定権者の手引きで必ずご確認ください。


主な加算・減算


就労定着支援には、支援体制を評価する加算や、基準を満たさない場合の減算があります。加算の例としては、地域連携会議実施加算、初期加算、就労定着実績体制加算などがあり、減算の例としては、人員欠如や個別支援計画未作成、情報公表未報告、業務継続計画(BCP)未策定などに係る減算があります。加算・減算の要件と単位数は改定のたびに見直されるため、算定にあたっては最新の告示・通知を確認してください。


令和6年度・令和8年(2026年)改定での主な動き


令和6年度改定のポイント


令和6年度(2024年度)報酬改定では、就労定着支援について、(1)障害者就業・生活支援センターの実施主体への追加、(2)就労移行支援事業所等の直接処遇職員による就労定着支援員の兼務(配置要件の緩和)、(3)地域連携会議実施加算の対象拡大、(4)支援の引き継ぎのための措置を講じない場合の減算の新設などが行われました(厚生労働省の報酬改定資料)。


令和8年(2026年)6月の期中改定


さらに、令和8年度(2026年)には臨時応急的な報酬改定(期中改定)が行われ、処遇改善加算の対象を障害福祉従事者全体へ拡大する見直しなどが2026年6月施行で予定されています。障害福祉サービス全体に影響する改定であり、就労定着支援を含む各サービスの単価・加算にも関連します。改定内容は施行時期によって異なるため、最新の情報は厚生労働省および指定権者の案内でご確認ください。


よくある質問(FAQ)


Q1. 就労定着支援は就職してすぐ利用できますか。


いいえ。原則として、一般就労を継続している期間が6か月に達した後からの利用となります。就職後最初の6か月間は、就労移行支援事業所等による定着支援でカバーする考え方です。


Q2. 支援は何年まで受けられますか。


最長で3年間です。おおむね1年ごとに支給決定を更新しながら、上限3年まで支援を継続します。3年経過後は、地域の関係機関への引き継ぎが想定されています。


Q3. どんな支援をしてもらえますか。


月1回以上の相談を基本に、職場や医療機関等との連絡調整、生活リズム・体調・金銭管理などの相談・助言を受けられます。本人と職場の間に立った調整も行いますが、医療的な治療方針の指示を行うものではありません。


Q4. 事業を始めるには何が必要ですか。


指定権者(都道府県・指定都市・中核市等)からの指定が必要で、就労定着支援員やサービス管理責任者の配置などの人員・設備・運営基準を満たす必要があります。詳細な要件や必要書類は指定権者ごとに異なるため、管轄自治体の手引きをご確認ください。


Q5. 報酬はどのように決まりますか。


「就労定着率」に応じた基本報酬を軸に、各種加算・減算を加味して算定します。定着率が高いほど高い単位数となる成果評価型です。具体的な単位数は最新の告示および指定権者の手引きでご確認ください。


まとめ


就労定着支援は、一般就労した障害のある方が「働き続けられる」ことを支える、就労移行支援等の出口を担う重要なサービスです。対象は就労6か月経過後、支援期間は最長3年、人員基準として就労定着支援員とサービス管理責任者の配置が求められ、基本報酬は就労定着率で評価されます。制度の細部や報酬の単位数は令和6年度・令和8年(2026年)の改定で見直されており、指定権者によって運用も異なります。事業の指定申請や運営でお困りの際は、最新の告示・自治体の手引きを確認のうえ、障害福祉に詳しい専門家にご相談ください。

bottom of page