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障害者優先調達推進法とは|行政から仕事を受注する方法と手順

執筆者の写真: 和久 竹村
和久 竹村
7月20日
読了時間: 9分

結論:行政には「障害者就労施設等から優先的に買う」ルールがあります


障害者優先調達推進法は、国・独立行政法人・地方公共団体・地方独立行政法人が物品やサービス(役務)を調達するときに、障害者就労施設等から優先的・積極的に購入することを推進する法律です。正式名称は「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」で、平成24年6月27日に公布、平成25年4月1日から施行されています(厚生労働省「障害者優先調達推進法が施行されました」)。


この法律により、国等は毎年度、障害者就労施設等からの調達方針を作成・公表し、年度終了後には調達の実績を公表することとされています。つまり、行政側には「どこから、どのくらい買うか」を決めて外に出す仕組みがあり、事業所側はその仕組みに乗ることで受注の可能性を広げられます。


ただし、法律が保証しているのは「優先的に調達を推進する枠組み」であって、個々の事業所の受注や工賃の向上を保証するものではありません。実際に仕事につなげるには、登録・情報提供・提案といった事業所側の動きが欠かせません。この記事では、その実務の流れを整理します。


障害者優先調達推進法の基本


法律の目的


厚生労働省は、この法律の趣旨を「障害者就労施設等の受注の機会を確保するために必要な事項等を定めることにより、障害者就労施設等が供給する物品等に対する需要の増進を図る」ものと説明しています。背景にあるのは、障害者就労施設等で働く方の経済面の自立を進めるという考え方です。


誰が対象になるのか(発注する側)


対象となるのは、国、独立行政法人等、地方公共団体(都道府県・市町村)、地方独立行政法人です。身近なところでは、県庁・市役所・町村役場、公立病院や公立大学法人などが該当し得ます。


どこから買うのか(受注する側=障害者就労施設等)


厚生労働省の資料等によれば、「障害者就労施設等」には次のようなものが含まれます。


・障害者総合支援法に基づく事業所・施設

 -就労移行支援

 -就労継続支援A型・B型

 -生活介護

 -障害者支援施設(上記の事業を行うもの)

 -地域活動支援センター

・障害者基本法に基づく補助を受けている小規模作業所

・障害者雇用促進法に基づく特例子会社(とくれいこがいしゃ:障害者雇用のために設立され、一定の認定を受けた子会社)

・重度障害者多数雇用事業所(一定の障害者雇用の要件を満たす事業所)

・在宅就業障害者(自宅等で物品の製造や役務の提供を行う障害者)

・在宅就業支援団体(在宅就業障害者に対する援助を行う団体)


重度障害者多数雇用事業所の認定要件は自治体が定めており、例えば埼玉県は「県内の障害者労働者が5人以上」「労働者全体の20%以上が障害者」「重度身体障害者、知的障害又は精神障害者の占める割合が30%以上」といった要件を公表しています(埼玉県「障害者優先調達推進法」)。要件や様式は自治体ごとに異なるため、必ず所在地の自治体のページで確認してください。


調達方針と実績の公表


国等は毎年度、調達方針を作成して公表します。調達方針には、その年度に調達を推進する物品・役務の種類や、調達の目標などが盛り込まれます。年度が終わると、実績が公表されます。


厚生労働省は各機関の調達方針・調達実績を取りまとめて公表しており、独立行政法人・都道府県については調達方針の策定率が100%となっています(厚生労働省「障害者優先調達推進法における調達方針・調達実績について」)。最新年度の調達実績の金額・件数は同ページで公表資料が更新されますので、数値を引用する際は必ず最新の公表資料をご確認ください。


なぜ「優先調達」だと受注しやすいのか


随意契約という入口がある


通常、行政の契約は競争入札が原則です。しかし地方自治法施行令第167条の2第1項第3号は、障害者支援施設、地域活動支援センター、障害福祉サービス事業を行う施設等から物品を買い入れる場合や役務の提供を受ける場合について、随意契約(ずいいけいやく:競争入札によらず、相手方を選んで契約する方法)によることができると定めています。実際に多くの自治体が、この規定に基づく取扱要綱や事業者認定の仕組みを設けています(例:八王子市、近江八幡市などが手続を公表)。


これは「入札で大手と価格競争をしなくても契約の入口があり得る」ということを意味します。ただし、どの範囲でどう運用するかは自治体ごとに要綱で定められています。適用の可否・金額の上限・認定手続は、各自治体の調達方針および契約担当課の要綱で必ずご確認ください。


「買いたいけれど、どこに頼めるか分からない」が現実


行政側は法律上の努力義務を負っていますが、担当課が「近くにどんな事業所があり、何ができるのか」を把握できていないことは珍しくありません。逆にいえば、事業所側から「何ができるか」を可視化して届けることが、そのまま受注機会につながります。


事業所が行政から仕事を受注するまでの手順


STEP1:自事業所の「売れるもの」を棚卸しする


まず、提供可能な物品と役務を書き出します。よく調達対象になるものの例としては、次のような分野があります。


・物品:印刷物、名刺、封筒、記念品、食品・菓子、農産物、木工品、雑貨 など

・役務:清掃、除草・草刈り、施設管理補助、データ入力、封入・封緘、発送作業、リサイクル、クリーニング、弁当・仕出し、会議用茶菓の提供 など


このとき、単価・対応可能数量・納期・繁忙期・対応できない条件までセットで整理しておくと、後の商談がスムーズです。


STEP2:所在地の自治体の「調達方針」を読む


都道府県・市町村はそれぞれ調達方針を公表しています。方針を読むと、その自治体がどの分野の調達を伸ばそうとしているかが見えます。自事業所の強みと重なる分野があれば、そこが狙い目です。方針の内容・目標・対象範囲は自治体ごとに異なりますので、各自治体の調達方針で要確認です。


STEP3:共同受注窓口に登録する


共同受注窓口とは、障害福祉サービス事業所等が提供できる物品・役務の情報を集約し、行政等からの発注内容を、対応できる複数の事業所にあっ旋・仲介する役割を担う組織です。単独では受けきれない大きな単位の仕事を、複数事業所で分担して受注できるようにするのが狙いです。


例えば神奈川県は「神奈川障害者共同受注窓口(愛称:はたらき隊かながわ)」を設置し、登録フォームからの事業所登録、商品・作業種目一覧での検索、受注希望作業情報の掲載などを行っています(神奈川県「神奈川障害者共同受注窓口 はたらき隊かながわ」)。窓口の名称・運営主体・登録方法は都道府県ごとに異なりますので、お住まいの都道府県の窓口をご確認ください。


STEP4:自治体の「受注希望事業所一覧」に載る


多くの自治体が、受注を希望する事業所の一覧を作成・公開しています(神奈川県も「受注希望!障害福祉サービス事業所等一覧」を公開しています)。発注担当者が探すときの最初の入口になりますので、掲載申込は早めに行い、内容は最新に保ちましょう。


STEP5:担当課に提案する


一覧に載るだけでは、担当者の目に留まらないこともあります。次のような準備をして、担当課に届ける動きを組み合わせると効果的です。


・A4片面1枚の「できることシート」(品目・単価・数量・納期・写真)を用意する

・サンプル(印刷物の実物、商品現物)を持参する

・「今、どこに発注していますか」ではなく「この作業、当所でも対応できます」と具体名で伝える

・年度末ではなく、予算編成期・年度初めなど、発注が動き出す時期に合わせる


STEP6:小さく受けて、実績を積む


初回は小ロットの発注から始まることが多いです。納期を守る、品質が安定している、連絡が早い——この3点が次年度の継続につながります。優先調達は「一度取引が始まると翌年度以降も継続しやすい」性質があり、実績づくりが最大の営業になります。


よくある誤解


・「法律があるから必ず発注してもらえる」→ 誤りです。国等の責務は調達の推進であり、特定の事業所への発注を保証するものではありません。

・「価格は関係ない」→ 誤りです。品質・納期・価格の妥当性は当然に問われます。

・「窓口に登録すれば仕事が来る」→ 登録は入口です。情報の更新と提案の動きがあってこそ機会が広がります。


FAQ


Q1.就労継続支援B型ですが、対象になりますか。


A.就労継続支援B型は、障害者総合支援法に基づく事業所として「障害者就労施設等」に含まれます。ただし、自治体の調達方針や随意契約の運用における具体的な取扱い(登録・認定の要否など)は自治体ごとに異なりますので、各自治体の調達方針でご確認ください。


Q2.役務(サービス)でも受注できますか。


A.できます。障害者優先調達推進法は物品と役務の双方を対象としています。清掃、除草、データ入力、封入・発送などは実際に調達されている代表的な役務です。ただし、どの役務を調達するかは各機関の調達方針によります。


Q3.共同受注窓口はどこにありますか。


A.都道府県ごとに設置・運営されており、名称や運営主体は異なります(例:神奈川県は「はたらき隊かながわ」)。所在地の都道府県の障害福祉主管課のページから確認するのが確実です。


Q4.国や独立行政法人にも売り込めますか。


A.国・独立行政法人等も対象機関です。各機関が調達方針と実績を公表しており、厚生労働省のページから各機関の調達方針・担当窓口を確認できます。


Q5.行政以外の民間企業から受注することもできますか。


A.障害者優先調達推進法が直接対象とするのは国等の公的機関ですが、生産活動の受注先を公的機関だけに限る必要はありません。民間企業からの受注と組み合わせることで、季節変動をならし、仕事量を安定させやすくなります。


まとめ


障害者優先調達推進法は、行政が障害者就労施設等から優先的に物品・役務を調達することを推進する法律です。行政側には調達方針の作成・公表と実績の公表という仕組みがあり、随意契約という入口も用意されています。事業所側は、①できることを棚卸しし、②自治体の調達方針を読み、③共同受注窓口と受注希望一覧に登録し、④担当課に具体的に提案し、⑤小さく受けて実績を積む——この流れが基本です。制度の細部と運用は自治体ごとに異なりますので、必ず各自治体の調達方針・要綱でご確認ください。


(本記事は2026年7月3日時点で公表されている厚生労働省および各自治体の公表情報に基づいて作成しています。制度の内容や運用は改正・更新される場合がありますので、最新情報は各機関の公式ページでご確認ください。)


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