生産活動の種類と選び方|就労継続支援B型の作業内容の決め方
生産活動の種類と選び方|就労継続支援B型の作業内容の決め方
結論
就労継続支援B型(以下「B型」)の生産活動は、「軽作業・内職」「清掃・施設管理」「リサイクル」「飲食・カフェ」「パン・菓子製造」「農作業」「印刷」「IT・データ入力」などが代表的で、それぞれ工賃単価・必要な設備投資・許認可の要否が大きく異なります。選び方の軸は、①利用者の特性と工程の相性、②工賃単価、③設備投資と回収期間、④許認可の要否、⑤受注の安定性の5点です。特に飲食店営業や菓子製造は食品衛生法上の営業許可が必要になる場合があり、施設基準や取扱いは自治体ごとに運用が異なりますので、必ず所轄の保健所にご確認ください。なお、どの作業を選んでも工賃が上がることを保証するものではなく、受注量の確保という「営業」の要素が結果を大きく左右します。
まず押さえたい前提|工賃は「生産活動の収支」から支払われる
B型の工賃は、生産活動によって得られた収入から生産活動に必要な経費を差し引いた額を、利用者に支払う仕組みです。つまり工賃を上げる方法は原理的に「生産活動収入を増やす」か「経費を下げる」かの二つしかなく、その土台になるのが「どの生産活動を選ぶか」という設計です。
厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、B型事業所の全国平均工賃は月額24,141円(対前年比106.6%、報告事業所数18,245か所)で、令和5年度の22,649円から増加しています。あわせて公表されている都道府県別の数値を見ると、最も高い県で30,231円、低い府県では19,747円台と、地域によって1万円前後の開きがあります。全国平均はあくまで目安であり、まずはご自身の都道府県の数値と比べることをおすすめします。
また、多くのB型事業所は「工賃向上計画」(都道府県・事業所が工賃引上げのために策定する計画)に基づく取組を求められています。厚生労働省の通知により、令和6年度以降も本計画に基づく取組を推進することとされており、多くの自治体が令和6〜8年度を一つの計画期間として運用しています。計画様式・提出期限・未提出時の取扱いは自治体差がありますので、指定権者(都道府県・政令市・中核市)の案内をご確認ください。
生産活動の代表的な種類と特徴
1. 軽作業・内職(袋詰め、シール貼り、組立、封入など)
最も導入事業所が多い定番です。設備投資がほとんど不要で、工程を細かく分けられるため、作業スピードや集中の持続に差がある方でも参加しやすいのが利点です。一方で単価は低く設定されがちで、受注が景気や取引先の事情に左右されやすいという弱点があります。単一の取引先に依存すると、その1社の発注停止で工賃が急落します。
2. 清掃・施設管理
企業や公共施設の清掃、除草、備品管理などです。設備投資が比較的小さく、役務(サービス)契約のため継続受注につながりやすい点が魅力です。移動や現場対応が必要になるため、送迎体制と職員の同行が前提になります。
3. リサイクル・資源回収
古紙・古布・空き缶回収、機密文書の溶解、リユース品の分別などです。地域の企業・自治体との関係づくりが要になります。取り扱う品目によっては廃棄物処理法上の許可等が関係する場合があるため、事前に自治体の廃棄物担当部署への確認が必要です。
4. 飲食・カフェ
地域との接点づくりや利用者のやりがいにつながりやすい一方、店舗改修・厨房設備の投資が大きく、売上の季節変動も受けます。食品衛生法に基づく飲食店営業許可が必要です。
5. パン・菓子製造
菓子製造業などの営業許可が必要になります。厚生労働省の説明によると、平成30年の食品衛生法改正により令和3年6月から営業許可業種が再編され(許可業種は32業種)、あわせて「営業届出」の制度が創設されました。どの業種に当たるか、施設基準を満たすかは個別判断になりますので、必ず所轄の保健所にご相談ください。
6. 農作業(農福連携)
野菜や果樹の栽培、収穫・調製作業、農家からの作業受託などです。国は「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」(令和6年6月5日 農福連携等推進会議決定)で、農福連携等に取り組む主体数を令和12年度末までに1万2千以上とする目標を掲げており、政策的な後押しがある分野です。土地・天候・繁閑差への対応が課題になります。加工まで行う場合は、食品衛生法上の許可・届出の確認が必要です。
7. 印刷・製本
名刺、チラシ、封筒印刷など。機材投資が必要ですが、単価と付加価値を高めやすく、デザイン工程を職員が担い、断裁・封入を利用者が担うなど工程分担がしやすい分野です。
8. IT・データ入力・軽作業のデジタル化
データ入力、Web更新、動画編集など。PC操作が得意な方の強みを活かせ、在宅対応にも展開しやすい一方、品質管理と納期管理の体制づくりが必須です。
作業内容の決め方|5つの判断軸
軸1:利用者の特性と工程の相性
「単価が高い」ではなく「うちの利用者が続けられるか」から考えます。工程を分解して、立ち作業・座り作業、対人・非対人、反復・変化などのバリエーションを持たせられる作業は、体調や特性の幅に対応しやすくなります。
軸2:工賃単価(時間当たりでの検算)
「1個◯円」ではなく「1時間で何個できるか × 単価」で換算し、時間当たりの生産額を必ず出します。この検算をしないまま受注すると、忙しいのに工賃が上がらない状態に陥りがちです。
軸3:設備投資と回収
厨房・機材・車両などの初期投資は、生産活動の経費として工賃原資を圧迫します。投資額を回収する見込み年数まで置いて判断してください。
軸4:許認可の要否
飲食・食品製造は営業許可等、リサイクルは廃棄物関連の許可等が関係する場合があります。判断は所轄の保健所・自治体窓口へ。開始後の是正はコストが大きいため、着手前の確認が鉄則です。
軸5:受注の安定性(ここが最大の分岐点)
作業の種類そのものより、「安定的に仕事が入るか」が工賃を左右します。一つの取引先に依存せず、複数の受注先を持つことがリスク分散になります。なお、障害者優先調達推進法(正式名称:国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律)により、国や地方公共団体等は、障害者就労施設等からの物品・役務の調達を推進することとされています。自治体の調達方針や発注窓口を確認し、清掃・印刷・データ入力などで公的発注にアプローチする方法も検討に値します(調達方針・窓口は自治体ごとに公表されています)。
種類別の比較(目安)
種類/設備投資/許認可の目安/受注の安定性
・軽作業・内職/小/原則不要/取引先依存で変動しやすい
・清掃・施設管理/小〜中/原則不要(内容による)/契約化で安定しやすい
・リサイクル/中/品目により要確認(廃棄物関連)/地域連携次第
・飲食・カフェ/大/飲食店営業許可が必要/季節・立地に左右
・パン・菓子製造/中〜大/菓子製造業等の許可が必要/販路づくり次第
・農作業/中/加工時は要確認/天候・繁閑差あり
・印刷/中/原則不要/リピート化しやすい
・IT・データ入力/小〜中/原則不要/品質管理次第
※上記は一般的な傾向の整理であり、個別の許認可の要否・区分は必ず所轄の保健所・自治体窓口でご確認ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1.工賃が高い生産活動の種類はどれですか。
A.厚生労働省が公表しているのは事業所種別・都道府県別の平均工賃であり、「作業の種類別」の全国平均は同資料では示されていません。種類だけで工賃が決まるわけではなく、受注量・単価設定・工程効率の影響が大きい点にご留意ください。特定の作業を選べば工賃が上がると保証できるものではありません。
Q2.全国平均の工賃はいくらですか。
A.厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、B型事業所の平均工賃は月額24,141円(前年度22,649円)です。同資料ではA型事業所の平均賃金は月額91,451円と公表されています。
Q3.カフェを始めたいのですが、まず何をすべきですか。
A.事業計画づくりと並行して、所轄の保健所へ事前相談してください。食品衛生法に基づく営業許可の要否や施設基準の適合が前提になります。あわせて、指定権者に生産活動の内容変更に関する届出等の要否も確認しましょう。
Q4.生産活動の種類を途中で変更してもよいのでしょうか。
A.事業所の判断で見直すこと自体は可能です。ただし、運営規程や指定申請の記載内容との整合、変更届の要否は自治体の運用によりますので、指定権者への確認をおすすめします。工賃向上計画との整合も併せてご検討ください。
Q5.農福連携に取り組みたい場合、どこに相談すればよいですか。
A.都道府県の農政部局や農福連携の相談窓口、地域の農業協同組合などが入口になります。国の方針は「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」で示されており、支援の内容・窓口は地域によって異なります。
まとめ
生産活動の種類選びは、「流行っている作業」を追うことではなく、利用者の特性・単価・投資・許認可・受注の安定性という5つの軸を、自事業所の条件に当てはめて検討する作業です。そして実務上、最後に効いてくるのは「仕事が安定して入り続けるか」という受注の問題です。制度に関わる部分(許認可・届出・工賃向上計画)は自治体差がありますので、必ず所轄の窓口で一次情報をご確認ください。
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【参考にした主な公的資料】
・厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」
・厚生労働省「『工賃向上計画』を推進するための基本的な指針」関連通知
・厚生労働省「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」(食品衛生法関係)
・農福連携等推進会議「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」(令和6年6月5日)
・厚生労働省「障害者優先調達推進法」関係ページ
