グループホームの始め方|3類型・指定要件と人員基準を解説
結論:グループホームは「3類型の選択」と「人員・設備基準の充足」が出発点
障害者グループホーム(正式名称:共同生活援助〈きょうどうせいかつえんじょ〉)を始めるには、まず「介護サービス包括型」「外部サービス利用型」「日中サービス支援型」の3類型のどれで運営するかを決め、それに応じた人員基準・設備基準・運営基準を満たして都道府県・指定都市・中核市など指定権者の指定を受ける必要があります。
人員面では、令和6年度報酬改定で世話人(せわにん)の基本配置が「6:1」(介護サービス包括型・外部サービス利用型の場合)に整理され、より手厚い配置は「人員配置体制加算」で評価される仕組みになりました。加えて、令和8年(2026年)6月1日以降に新規指定を受ける事業所には、基本報酬の調整(所定単位数×972/1000=約2.8%減)という臨時的な見直しが適用されます。
注意したいのは、障害者総合支援法の基準だけでなく、消防法・建築基準法といった「他法令」への適合も指定の前提になる点です。本記事では、令和6年度改定および令和8年6月施行の改定を踏まえ、始め方の全体像を行政書士監修の視点で整理します。なお、単位数・加算の詳細や運用は指定権者により異なるため、最終的には最新の告示・お住まいの自治体の指定申請の手引きで必ずご確認ください。
そもそも共同生活援助(グループホーム)とは
共同生活援助は、障害のある方が地域のなかでアパートや一戸建てなどに共同で生活し、世話人や生活支援員から日常生活上の援助(相談・入浴・排せつ・食事の介護など)を受けるサービスです。日中は就労や生活介護などの場へ通い、朝晩や休日をグループホームで過ごす、という利用が基本的なイメージになります。
運営の単位は「共同生活住居」と、その中の「共同生活の単位(ユニット)」です。事業者は最低1つの共同生活住居(複数の場合は地域内に確保)を備える必要があります。
グループホームの3類型と違い
共同生活援助は、介護サービスの提供方法によって次の3つに分かれます(厚生労働省「共同生活援助に係る報酬・基準について」、各自治体の手引き)。どの類型で指定を受けるかで、人員基準や設備、報酬の考え方が変わります。
介護サービス包括型
事業所自らが世話人に加えて生活支援員を配置し、入浴・排せつ・食事などの介護を「包括的に」提供する類型です。最も一般的なタイプで、利用者の障害支援区分に応じて生活支援員を配置します。
外部サービス利用型
世話人による日常生活上の援助は事業所が行いますが、介護そのものは外部の居宅介護事業者(受託居宅介護サービス事業者)へ委託して提供する類型です。事業所内に生活支援員を配置しない代わりに、必要な介護は外部の指定居宅介護事業者が担います。基本報酬に外部の介護費が加わる構造です。
日中サービス支援型
常時介護を必要とする方などを想定し、昼夜を通じて(日中も)介護サービスを事業所が提供する類型です。特徴として、短期入所(ショートステイ)の併設または同一敷地内での実施が義務づけられている点、そして夜間支援従事者の配置が必須である点が挙げられます(平成30年2月21日障害福祉課事務連絡「日中サービス支援型共同生活援助の施行に向けた留意点」、各自治体の手引き)。包括型・外部利用型では夜間の体制確保は加算(任意)扱いであるのに対し、日中サービス支援型では夜間支援が前提となります。
指定を受けるための主な要件(人員基準)
ここでは令和6年度報酬改定後の人員基準の概要を示します。実際の配置は常勤換算方式(じょうきんかんさんほうしき:常勤職員の勤務時間を基準に職員数を算出する方法)で計算します。数値は複数の自治体の指定申請の手引きで共通して示されている基準ですが、運用は指定権者により細部が異なるため、最新の告示・自治体の手引きで要確認です。
管理者
常勤で1名の配置が必要です。資格要件は定められておらず、管理業務に支障がない範囲で他職種・他事業所と兼務できます。
サービス管理責任者(サビ管)
サービス管理責任者は、利用者の個別支援計画の作成などを担う中核職員です。配置数は利用者数に応じて、利用者30人以下で1名以上、31人以上は利用者数が30人を超えるごとにさらに1名以上が目安とされます。一定規模以上ではできる限り専従の配置が望ましいとされています。
世話人
日常生活上の世話を担う職員です。令和6年度改定で配置区分が整理され、介護サービス包括型・外部サービス利用型では常勤換算で「利用者数を6で除した数以上」(いわゆる6:1)が基本配置となりました。日中サービス支援型はより手厚い配置(5:1)が求められます。なお、改定前にあった4:1・5:1などの上乗せ区分は基本報酬としては廃止され、基準を超える手厚い配置は後述の「人員配置体制加算」で評価される仕組みに変わりました。
生活支援員(介護サービス包括型)
入浴・排せつ・食事などの介護を担う職員です。介護サービス包括型では、利用者の障害支援区分に応じて、常勤換算で次の合計以上を配置します(外部サービス利用型では生活支援員を置かず、介護は外部委託)。
障害支援区分3:利用者数 ÷ 9
障害支援区分4:利用者数 ÷ 6
障害支援区分5:利用者数 ÷ 4
障害支援区分6:利用者数 ÷ 2.5
(障害支援区分2以下は算定の対象外)
夜間支援従事者
介護サービス包括型・外部サービス利用型では、夜勤・宿直や警備会社への委託などで夜間の支援体制を確保した場合に「夜間支援等体制加算(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)」を算定でき、配置自体は任意です。一方、日中サービス支援型では夜間支援従事者の配置が必須となります。
設備・定員に関する基準
共同生活住居の入居定員は2人以上10人以下が原則で、既存建物を活用する場合などは2人以上20人以下の取扱いが認められる場合があります。共同生活の単位(ユニット)の定員は2人以上10人以下です。居室は原則1人1室で一定の床面積、加えて居間・食堂・台所・トイレ・浴室など日常生活に必要な設備を備えることが求められます。
日中サービス支援型では、前述のとおり短期入所の併設(または同一敷地内での実施。空床利用型は不可)が必要で、短期入所の定員は「入居定員の合計が20人またはその端数を増すごとに1人以上5人以下」とする取扱いが示されています(各自治体の手引き)。定員・床面積の細部は指定権者により異なるため、必ず自治体の手引きで確認してください。
見落としやすい「他法令」:消防法・建築基準法
グループホームの指定は、障害者総合支援法の基準を満たすだけでは完結しません。消防法・建築基準法など他法令への適合確認が前提です。
消防法(スプリンクラー等)
障害者グループホームは、消防法施行令別表第一の「6項」に該当する防火対象物として扱われます。平成27年4月の改正で、避難が困難な方が一定割合を占める施設(6項ロに該当)では、原則として面積にかかわらずスプリンクラー設備が必要とされました。ただし、避難が困難な入居者(障害支援区分4以上の方)の割合などに応じた緩和・免除の取扱いがあるため、自動火災報知設備や消防機関へ通報する火災報知設備の要否を含め、所轄の消防署への事前相談が欠かせません(出典:消防庁関連通知、各市の案内)。
建築基準法(用途・用途変更)
グループホームは建築基準法上の独立した用途区分がないため、規模・各室の独立性などから「寄宿舎」「共同住宅」などとして取り扱われます。既存建物を活用する場合は検査済証の有無を確認し、無い場合は建築士などによる適合調査が必要になることがあります。用途や床面積によっては用途変更の確認申請が必要となる場合もあるため、物件選定の段階で建築の専門家・特定行政庁への確認をおすすめします。
なお、近隣住民や自治会への事前説明はトラブル防止の観点で重要であり、多くの自治体の開設マニュアルでも推奨されています。
開設の大まかな流れ
一般的な進め方は次のとおりです(指定権者により前後します)。
事業計画・類型の決定(3類型のどれで運営するか)
法人格の取得・定款の事業目的確認
物件の選定と他法令(消防・建築)の事前確認
人員(管理者・サビ管・世話人・生活支援員)の確保
指定権者との事前協議・事前相談
消防・建築の適合確認、必要な届出・申請
指定申請書類の作成・提出
審査・現地確認を経て指定、運営開始
スケジュールは数か月単位で見込み、特に物件と消防・建築の適合確認は早めに着手するのが安全です。
令和8年(2026年)6月の改定で押さえるべき点
令和8年6月1日施行の臨時的な報酬の見直しでは、同日以降に新規指定を受けるグループホーム等について、基本報酬が所定単位数×972/1000(約2.8%減)に調整されます。これは「新規指定事業所」が対象で、既存事業所はこの調整の対象外とされています。
ただし、離島・中山間地域、公募により設置された不足地域の事業所、自治体から経済的支援を受けて設置された事業所など、地域ニーズが高いと認められる場合には改定前の単価を維持する配慮措置が設けられています。これから開設する方は、自分の計画がこの調整・配慮措置のどちらに当たるかを、最新の告示と自治体の案内で必ず確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 未経験でもグループホームを始められますか?
法人として人員・設備・運営基準を満たし、指定を受ければ運営は可能です。ただしサービス管理責任者の確保や、消防・建築の適合確認など専門的な手続きが多く、計画段階での準備が成否を分けます。効果や収益を保証するものではない点はご理解ください。
Q2. 3類型のうち最初はどれを選ぶべきですか?
一概には言えませんが、まずは利用対象や提供したい支援の重さ(常時介護の要否、夜間支援の必要性)から検討します。常時の介護・夜間支援を前提とするなら日中サービス支援型、外部の介護資源を活用したいなら外部サービス利用型、という整理が一つの目安です。
Q3. 世話人の「6:1」とは具体的にどういう意味ですか?
常勤換算で、利用者数を6で割った数以上の世話人を配置する、という意味です(介護サービス包括型・外部サービス利用型の基本配置)。日中サービス支援型はより手厚い5:1です。これを超える手厚い配置は人員配置体制加算で評価されます。
Q4. アパートの一室でも開設できますか?
居室・共用設備の基準や定員、消防・建築上の取扱い(寄宿舎等)を満たす必要があります。既存建物の場合は検査済証や用途変更の要否確認が重要です。物件選定の前に消防署・特定行政庁・指定権者へ相談することをおすすめします。
Q5. 加算の単位数まで自分で把握すべきですか?
基本報酬や夜間支援等体制加算・人員配置体制加算などは収支に直結しますが、単位数は改定で変わり、運用も指定権者により異なります。最新の告示・留意事項通知と自治体の手引きを一次情報として確認し、不明点は指定権者や専門家にご相談ください。
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※本記事は令和6年度報酬改定および令和8年6月施行の改定情報をもとに、一般的な制度概要を整理したものです。具体的な単位数・要件・手続きは、厚生労働省の告示・留意事項通知、WAM NET、お住まいの自治体(指定権者)の指定申請の手引きで必ず最新情報をご確認ください。個別のご相談は行政書士 結和法務事務所までお問い合わせください。
