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共同受注窓口の活用法|複数事業所で仕事を受ける仕組みと注意点

執筆者の写真: 和久 竹村
和久 竹村
7月20日
読了時間: 10分

共同受注窓口とは、大口・短納期の仕事を複数の事業所で分担して受注する仕組みです。障害者優先調達推進法との関係、利用の流れ、メリットと品質・納期・配分の注意点を、厚生労働省の公表資料をもとに解説します。


結論


共同受注窓口(きょうどうじゅちゅうまどぐち)とは、発注者からの注文を受け付け、対応できる複数の障害者就労施設等にあっせん・仲介する団体のことです。1つの事業所では受けきれない大口・短納期の仕事でも、窓口が複数事業所に振り分けることで受注できる可能性が広がります。


窓口は、国や自治体が障害者就労施設等から優先的に物品・役務を調達する「障害者優先調達推進法」の受け皿としても機能しています。厚生労働省の公表資料によれば、令和6年度の国等による調達実績は153,184件・約246億円(24,637,956,391円)で、この需要につながる入口の一つが共同受注窓口です。


ただし、窓口の設置状況・名称・運営主体・受付ルールは都道府県ごとに異なります。参加を検討する際は、必ずお住まいの都道府県の窓口で最新の条件をご確認ください。本記事は制度の一般的な解説であり、特定の受注や工賃額を保証するものではありません。



共同受注窓口とは何か


定義と位置づけ


共同受注窓口は、厚生労働省の説明では「物品等の調達を複数の障害者就労施設等にあっせんし又は国等との間の物品等の調達を仲介する等の業務を行う」団体とされています(厚生労働省「障害者就労施設等情報」)。愛知県も、共同受注窓口を「障害福祉サービス事業所等が提供可能な物品及び役務の情報収集や県からの発注内容を対応可能な複数の障害福祉サービス事業所等にあっ旋・仲介する業務を行う団体」と説明しています。


平たく言えば、「仕事を頼みたい側」と「仕事を受けたい事業所」の間に立つ、地域のコーディネーター役です。


なぜ必要とされるのか


生産活動の受注では、次のようなミスマッチがよく起こります。


・発注者は500セットまとめて頼みたいが、1事業所では100セットが限界

・「来週まで」という短納期に、1事業所の人員では対応しきれない

・発注者は「どこに頼めばいいか分からない」、事業所は「営業先が分からない」


共同受注窓口は、この間を埋める仕組みです。埼玉県の共同受注窓口(埼玉県就労B型受注拡大ステーション)は、「一つの事業所では対応できない発注に際しても、事業所間の連携を行う」ことで受注を可能にする役割を掲げています。東京都の窓口であるTOSTEP(特定非営利活動法人日本セルプセンター運営)も、見積もりから納品まで専任のコーディネーターがワンストップで対応する体制を示しています。


根拠となる施策


共同受注窓口は、都道府県が実施する「工賃向上計画支援事業」のメニューの一つとして体制整備が図られてきました。工賃向上計画は、厚生労働省の「『工賃向上計画』を推進するための基本的な指針」に基づく取組で、同指針は令和6年3月29日付け障発0329第42号により一部改正され、令和6年度以降も取組を推進することとされています。窓口の運営主体は、社会福祉協議会、セルプセンター協議会、NPO法人などさまざまです。



障害者優先調達推進法との関係


法律の概要


正式名称は「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」(平成24年法律第50号)です。平成24年6月27日に公布され、平成25年4月1日から施行されました。


この法律により、国・独立行政法人等・地方公共団体・地方独立行政法人は、毎年度、障害者就労施設等からの物品等の調達を推進するための「調達方針」を作成し、年度終了後に調達実績の概要を取りまとめて公表することとされています。


対象となる「障害者就労施設等」には、就労移行支援・就労継続支援A型・B型などの事業所や生活介護等を行う障害者支援施設のほか、在宅就業障害者、在宅就業支援団体が含まれます。


調達の実績(一次情報)


厚生労働省が公表した令和6年度の調達実績(国等による障害者就労施設等からの物品等の調達実績)は次のとおりです。


・合計:153,184件/24,637,956,391円(約246億円)

・うち物品:83,760件/約47.2億円

・うち役務:69,424件/約199.2億円

・市町村分:107,014件/約176.1億円

・都道府県分:28,612件/約31.4億円


役務の内訳では「清掃・施設管理」が16,174件・約82.6億円と大きく、「その他の役務」16,792件・約61.6億円、「印刷」28,099件・約31.9億円と続きます。清掃・印刷・食料品といった、まさに就労継続支援事業所が取り組みやすい分野に公的需要があることが読み取れます。


窓口は「優先調達の受け皿」になる


自治体が優先調達をしようとしても、担当者が地域の事業所を一つひとつ探すのは負担です。そこで、窓口にまとめて相談する運用が広く取られています。愛知県も、事業所の所在地が分からない場合や、単独事業所では対応困難な大口注文の際に窓口を活用できると案内しています。


つまり、窓口に登録しておくことは、行政からの発注情報が届く経路に接続しておくことを意味します。



工賃との関係を数字で見る


厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」(22,465事業所が報告)によれば、令和6年度の平均は次のとおりです。


・就労継続支援B型事業所:平均工賃月額 24,141円(対前年比106.6%、18,245か所)

・就労継続支援A型事業所:平均賃金月額 91,451円(対前年比105.4%、4,220か所)


なお、令和5年度のB型全国平均は、当初公表の23,053円から22,649円に修正されています(令和8年3月追記)。また、平均工賃月額の算定方式は令和6年度障害福祉サービス等報酬改定で変更され、令和4年度までの「工賃支払対象者数」を分母とする方式から、「一日当たりの平均利用者数」を分母とする方式へ移行しています(令和5年度実績から新方式が反映)。過去の数字と単純比較できない点にご注意ください。


都道府県別に見ると、令和6年度のB型平均工賃月額は徳島県30,231円、福井県30,022円などが高く、大阪府19,747円、山形県19,621円などが下回っており、地域差があります。工賃はB型事業所の報酬にも関わるため、受注量の確保は経営面でも重要なテーマです。ただし、共同受注窓口に登録すれば工賃が上がるという性質のものではなく、あくまで受注機会の選択肢が一つ増える、という位置づけで捉えるのが実務的です。



利用の流れ


窓口ごとに手順は異なりますが、公表されている例を見ると、おおむね次の流れです(埼玉県就労B型受注拡大ステーションの案内を参考に整理)。


1. 発注者(企業・官公庁)から窓口に作業の依頼が入る

2. 窓口が作業内容・数量・単価・納期をまとめたシートを作成する

3. 発注者が内容を確認する

4. 窓口が登録事業所へ募集情報を配信する

5. 手を挙げた事業所へ作業を振り分け、発注・契約

6. 実施・納品

7. 完了報告・請求・支払い


事業所側が最初にすべきこと


・お住まいの都道府県の共同受注窓口を確認する(名称・運営主体は都道府県で異なります)

・登録の要否、登録様式、費用(手数料の有無)を確認する

・自事業所が対応できる作業内容・最大ロット・所要日数・単価の目安を棚卸しして伝える

・作業サンプルや写真、品質基準を用意しておく


なお、厚生労働省が掲載している共同受注窓口一覧は「平成31年1月31日現在」として整理されたものであり、その後、窓口の統廃合や名称変更が生じている可能性があります。必ず都道府県の障害福祉主管課の最新ページで確認してください。



メリットと注意点


メリット


・大口・短納期に対応できる:複数事業所で分担することで、単独では断らざるを得なかった規模の仕事を受けられる可能性があります。

・営業の負担が減る:窓口に情報が集まるため、事業所単独で発注先を開拓しなくても案件情報に触れられます。

・発注者にとっても頼みやすい:複数事業所へ発注しても、窓口が仲介するため連絡先や請求先が一つで済みます(埼玉県の窓口が明示)。

・優先調達につながる:自治体等の調達ニーズと接続する経路になります。


注意点(ここが実務の本番です)


・品質の統一:複数の事業所が同じ製品・作業を分担すると、仕上がりのばらつきが最大のリスクになります。見本(限度見本)、検品基準、包装仕様まで文書化しておくことが不可欠です。

・納期の管理:1事業所の遅れが全体の納品遅延になります。自事業所の実力値より余裕を持った日数で回答することをおすすめします。

・配分と単価:どの事業所にどれだけ振り分けるかは窓口の運用によります。数量が読めない、繁閑差が大きいといった前提で受けるべきで、常時の受注量を当て込んだ人員配置は避けたほうが無難です。

・手数料・費用負担:窓口の手数料や送料・材料費の負担ルールは窓口ごとに異なります。事前確認が必要です(一律の相場は公表されておらず、要確認)。

・利用者支援との両立:単価の安い仕事を大量に受けると、作業量は増えても工賃が伸びないことがあります。工賃向上計画の観点からも、単価と作業時間の見合いを確認しましょう。

・依存しすぎない:窓口経由の受注は変動します。自事業所独自の受注先と併走させることが、生産活動の安定につながります。



よくあるご質問(FAQ)


Q1. 共同受注窓口はどこの都道府県にもありますか?

A1. 厚生労働省は都道府県が把握している共同受注窓口の一覧を整理・掲載していますが、名称・運営主体・受付方法は都道府県によって異なり、複数の窓口がある県(例:愛知県)もあります。最新の設置状況は、お住まいの都道府県の障害福祉主管課または窓口へ直接ご確認ください。


Q2. 登録すれば必ず仕事が回ってきますか?

A2. いいえ。窓口はあっせん・仲介を行う立場であり、受注量を保証するものではありません。発注内容と各事業所の対応可能作業・ロット・納期が合致した場合に振り分けられるのが一般的です。


Q3. 就労継続支援B型でなければ利用できませんか?

A3. 窓口の対象範囲は運営主体によって異なります。障害者優先調達推進法上の「障害者就労施設等」には、就労移行支援・就労継続支援A型・B型、生活介護等を行う障害者支援施設のほか、在宅就業障害者・在宅就業支援団体も含まれます。窓口の登録要件は個別にご確認ください。


Q4. どんな仕事が多いのですか?

A4. 令和6年度の国等の調達実績では、役務は清掃・施設管理、印刷、その他の役務が金額的に大きく、物品は食料品・飲料、小物雑貨、事務用品などが並びます。ただし、窓口に来る民間からの依頼は、軽作業・組立・封入・発送などの内職的作業も多く、地域差があります。


Q5. 窓口を使うと工賃は上がりますか?

A5. 効果を保証することはできません。受注機会が増えることは工賃向上の一要素になり得ますが、単価・作業時間・人員体制によって結果は変わります。工賃向上計画の中で、単価改善と受注量の両面から検討することが現実的です。



まとめ


・共同受注窓口は、大口・短納期の注文を複数事業所で分担して受けるための仲介役です。

・障害者優先調達推進法(平成25年4月1日施行)に基づく国等の調達は、令和6年度で153,184件・約246億円(厚生労働省公表)。窓口はその受け皿の一つです。

・利用の流れは「依頼受付→内容確認→事業所へ配信→振り分け→契約・納品→請求」が一般的です。

・メリットは受注機会と窓口一本化。注意点は品質統一・納期・配分・手数料です。

・窓口の有無や運用は都道府県で異なります。必ずお住まいの都道府県の窓口で最新の情報をご確認ください。



生産活動の「仕事づくり」でお困りの事業所さまへ


共同受注窓口は有力な選択肢ですが、記事のとおり受注量は発注状況に左右され、窓口だけで生産活動を安定させるのは簡単ではありません。自事業所で受注先を開拓する動き(=営業)を並走させることが、結果として工賃向上の土台になります。


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※本記事は制度の一般的な解説です。個別の取扱いや最新の運用は、所管の都道府県・市町村および各共同受注窓口にご確認ください。


【参考にした主な公表資料】

・厚生労働省「障害者優先調達推進法が施行されました」

・厚生労働省「障害者優先調達推進法における調達方針・調達実績について」(令和6年度 国等による障害者就労施設等からの物品等の調達実績)

・厚生労働省「障害者就労施設等情報」(全国共同受注窓口サイト/共同受注窓口一覧)

・厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」

・厚生労働省「『工賃向上計画』を推進するための基本的な指針」(令和6年3月29日障発0329第42号 一部改正)

・愛知県「共同受注窓口をご活用ください」

・一般社団法人埼玉県セルプセンター協議会/埼玉県就労B型受注拡大ステーション「共同受注とは」

・TOSTEP(東京都共同受注窓口/特定非営利活動法人日本セルプセンター)

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